人間関係は、ときに洞窟と化す。
今回は、プラトンが考えた「洞窟の比喩」から学び取れることについて述べていきます。
「洞窟の比喩」とは、プラトンの主著『国家』に出てくる話です。人間は洞窟に閉じ込められ、そこに差し込む太陽の光が壁に映し出す様々なものの影を見ている囚人にたとえられます。
そして、人間たちは、壁に映る影を実在と思い込んでいると言うのです。
例えば、太陽の光が「木」を通して壁に映すのは、実際の木ではなく、黒に染まった「木の影」ですが、洞窟の中から出られない人間たちはその「木の影」を木それ自体と思い込み、「木って黒いんですね」と言うような場合です。
プラトンはここで「イデア」という概念を説明していくのですが、今回は「洞窟の比喩」を応用して、私たちの人間関係について見ていきましょう。
例えば、Aくんが友達から嫌われているというケースを考えてみます。Aくんはもうそのグループから出たがっています。
このときのAくんの心境は、「僕はこのグループの全員から嫌われている」というものです。
はたして、本当にそうなのでしょうか?たしかに、現実としてAくんのことが気にくわないという人も何人かはいるでしょう。しかし、その数人を除いたほとんどのメンバーは「好き」あるいは「好きでも嫌いでもない」かもしれないのです。
したがって、Aくんが見ている現実は、まるで木の影と同じように、「本当のこと」を映し出していないのかもしれません。急にAくんが姿を消したら、「なぜ?」と戸惑うメンバーが多数出てくるかもしれません。
自分を取り巻く人間関係を正確に知ることはできませんが、それに対する自分自身の認識を一度疑うことはできます。
自分の認識は、単なる思い込みかもしれないのです。