心理学論文や人間関係的考え方を紹介!

2017.8.16~2020.8.31連続投稿(1,112日)。以降は不定期更新です。

私たちが「ウチ」を「ソト」よりも大事にするのは回避不可だということ。

心理学を上手に使ってミニマリストになっていくためには、集団との付き合い方が重要です。

 

例えば有名な私立大学Wに通っている人は、なぜか私立大学Kを「敵」のように見る傾向にあります。

 

また、ママ友が形成したグループは、所属している間はランチ会に誘われたり情報の共有が行われたりしますが、いざグループから離脱すると非常識な行動をされたりトラブルを起こされたりします。

 

このように私たちは、集団を形成すると別の集団や集団に所属していない人に対して必要以上に敵意を向けることがあります。

 

ここでは、私たちが「ウチ」を「ソト」よりも大事にするのは回避不可な理由について、論文を紹介しながら説明していきます。

 

権威のある雑誌の一つであるEuropean Journal of Social Psychologyに掲載されたTajfelらの研究では、最小条件集団パラダイム(Minimal Group Paradigm)と呼ばれる手法によって「内集団ひいき」についての研究を行いました。Minimalという言葉にも、非常に親近感を覚えます。

 

※内集団ひいきとは、自分が所属している集団(ingroup)には好意的な行動をとり、自分が所属していない集団(outgroup)には好意的でない行動をとることを指します。

 

実験参加者は、KleeとKandinsky(ともに20世紀前半の美術に重要な貢献をした実在する画家です)のどちらが描いた絵を好むかという基準で二つの集団に分類されました。

 

この集団が最小条件集団です。これが例えば「出身国による分類」「性別による分類」であれば、相手側の集団に対する様々なステレオタイプが発動するため、たとえ内集団ひいきが実験室の中で認められたとしても何が要因なのかがわかりません。

 

他方、このような最小条件集団の場合、分類の基準に合理性がなく、内集団ひいきが見られた場合は「単に集団に分けられたこと」「単に、相手の集団であること」が理由であることがわかるのです。大変賢い実験デザインですね。

 

この実験で見られた内集団ひいきについてですが、「内集団に対する報酬を多くする」ことと「外集団に対する報酬を少なくする」という「ひいき」をはっきりと区別しておく必要があります。

 

興味深いことに、

 

実験参加者は、内集団に対する報酬自体を増やすことよりも、内集団・外集団間の報酬の差を増やすことを重視したのです。

 

つまり、内集団の利益が犠牲になってもいいから、外集団に対する利益を増やそうとすることがわかったということです。

 

このような傾向が見られる理由としては、人間は基本的に自尊心を高めたい傾向にあり、自らが所属集団と一体化し、他の集団と比較することによっても自尊心を高めることができるからとされています。

 

興味がある人は、社会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner, 1979)を勉強しても良いかもしれません。

 

私たちが「ウチ」を大事にし、「ソト」を敵視するのは、このような最小条件集団でさえ見られます。

 

これに血縁や利害関係などが含まれているのが現実に存在する集団になるわけですから、自分たちにひいきをする傾向から逃れることはどうやら(社会心理学的には)難しいようです。

 

 

 

 

【参考にした文献】

Tajfel, H., Billig, M. G., Bundy, R. P., & Flament, C. (1971). Social categorisation and intergroup behavior. European Journal of Social Psychology, 1, 149-178.

 

Tajfel, H. & Turner, J. C.(1979)An integrative theory of intergroup conflict. In W. G. Austin & S. Worchel (Eds.)The Social psychology of intergroup relations.
Monterey, CA: Brooks Cole. pp.33-47.