心理学論文や人間関係的考え方を紹介!

2017.8.16~2020.8.31連続投稿(1,112日)。以降は不定期更新です。

うつ傾向が高い人の方が認知が正確かもしれないという衝撃的な研究

私たちは一般的に、「うつ傾向が高い人の方が低い人よりも認知が歪んでいる」という考えをもっているかもしれませんが、40年前の研究で、そうでない可能性について検討されています。

 

これは個人的にも非常に面白い研究です。

 

抑うつ傾向が高い実験参加者は、悲観的な認知のせいで抑うつ状態になるのではなく、むしろ健常者が楽観的な認知を行うことによって精神的な健康を維持しているかもしれないという実験心理学からの知見です。

 

Alloy & Abramson (1979)の実験1では、抑うつ傾向の高い学生・低い学生の「自分の反応と環境の結果との随伴性(contingency)の度合い」を推定する能力について検討されています。

 

なお実験参加者はBeck Depression Inventory (BDI)の得点が9以上で抑うつグループに、8以下で非抑うつグループに分類されました。

 

実験デザインは問題タイプ3種類×抑うつ・非抑うつ×性別×反応(押す・押さない)というものでした。

 

少し細かいですが、問題タイプ1(75-50)は実験参加者のコントロールが25%、問題タイプ2(75-25)は50%、問題タイプ3(75-0)は75%でした。

 

※左側の数字は「実験参加者がボタンを押した時に緑色ライトが実際に点灯する確率」で、右側の数字は「実験参加者がボタンを押さなかった時に点灯する確率」であるため、コントロールの確率が以上のようになるということです(カウンターバランスをとって押す・押さないの確率を逆にしたバージョンも同数の実験参加者に提示しています)。

 

実験の最後には「緑色ライトが点灯しただけ報酬がもらえる」という課題を行うのですが、問題タイプの確率を学習することによって押すか押さないかの判断をすることができます。

 

例えば押して75%の確率で点灯、押さない場合は全く点灯しなかったことを学習すれば、できるだけ押した方が報酬に近づくということです。

 

実験1ではどうやら抑うつ・非抑うつによる差が見られなかったようですが、次に実験2では問題タイプ1(25-25)と問題タイプ2(75-75)が実験参加者に提示されました。いずれも、ボタンを押そうが押しまいが25%あるいは75%の確率で緑色のライトが点灯するというものでした。

 

メインの結果を言っておくと、非抑うつ実験参加者(特に女性参加者)は問題タイプ1においてコントロール感を過大評価していたということです。

 

ポイントとしては、押しても75%、押さなくても75%の確率でライトが点灯するという条件においては、非抑うつの参加者は直観、妥当性のないヒューリスティック、複雑なパターンによってコントロール感を持っていると信じ込んでいたことが実験後の質問で明らかになりました。

 

色眼鏡をかけて世界を見ているのは、抑うつの人ではなく非抑うつの人なのかもしれないという大変興味深い研究です。

 

【参考にした文献】

Alloy, L. B., & Abramson, L. Y. (1979). Judgment of contingency in depressed and nondepressed students: sadder but wiser? Journal of Experimental Psychology: General, 108, 441-485.