心理学論文や人間関係的考え方を紹介!

2017.8.16~2020.8.31連続投稿(1,112日)。以降は不定期更新です。

自己開示と返報性

私たちは普段、自分自身に対して本当のことを言ったり言わなかったりします。

 

このうち、自分自身のプライベートな情報を誠実に伝達することを自己開示(self-disclosure)と言います。

 

自己開示は、受け手送り手にとってメリットをもたらします。まず受け手は、送り手から「実は私ってこういう人なんだ」「こういう過去があって、こういうことを悩んでいるんだ」という自己開示を受けることによって、「自己開示をしてもらった!」という信頼感を得ることができます。

 

他方で送り手は、カタルシス的な意味での感情表出、自分の意見を明確にできること(自己明確化)、相手との比較を通じて自分の意見の妥当性を効率よく妥当化できること(社会的妥当化)などのメリットがあります。

 

ここではもう少し踏み込んで、自己開示のもたらすメリットをダイナミックな過程で見ていきます。

 

それが、返報性です。

 

これは、Jourard(1959)が"dyadic effect"すなわち二者効果と呼んだもので、他者からの自己開示の内密度に合った自己開示が行われるというものです。

 

自己開示の受け手送り手からいろいろなことを打ち明けられたことに対して「何かしらの気持ち」を抱き、自己開示という形でお返しをするということです。

 

例えば、仲良くしている友達から「実は就職活動で悩んでいて・・・」と相談されて、「親が第一志望の会社に反対しているんだよね」と言ったようなプライベートなことを話されると、「何かしらの気持ち」を持った受け手は相談に乗りつつ「実は自分もね・・・」と自己開示をする傾向にあります。

 

ここで受け手が抱く「何かしらの気持ち」ですが、二つの可能性が存在しています。

 

【1. より好意をもった】

これは直感的にもわかりやすいと思います。単純にプライベートなことを言ってくれたことに対して「自分のことを信頼してくれているんだな」とより好意をもったから、自己開示をしようと受け手側も思ったということです。

 

【2. 社会的な交換】

これは、自己開示の受け手が「不公平さ」を感じるというものです。こちらの方が社会心理学的な考え方です。

 

すなわち、相手からプライベートな情報を伝達されたということは、ポイント制でいうと相手が現在プラス1みたいな状況になっています。

 

これに対して受け手は、何かお返しをしないと「なんだかムズムズする」ということです。これが不公平さに対する不快な感情です。

 

興味深いポイントは、受け手にとって相手の方がプラス1なのであれば、経済人的な発想でいえば問題ないということです。

 

いわばファストフード店で「今日はおごるよ!」と言われてハンバーガーをごちそうになっている状態で、「次は自分がおごらなくちゃいけないよな」という不快感を抱いているのと理屈は同じです。

 

このような不公平に対する不快な感情、あるいは「お返ししなきゃ」という義務感のようなものは、実験的に測定するのが非常に困難ですが、実生活において誰もが感じる感情なのではないかと思います。

 

とはいえ、自己開示をすることによって相手からも自己開示をしてもらえるという事実は、どうやら普遍的な現象のようです。

 

 

 

【参考にした文献】

Jourard, S. M. (1959). Self-disclosure and other cathexis. Journal of abnormal and Social Psychology, 59, 423-431.