心理学論文や人間関係的考え方を紹介!

2017.8.16~2020.8.31連続投稿(1,112日)。以降は不定期更新です。

都合の悪い条件は、うまーく隠されている。

今回は、多方面で利用されている説得テクニックをご紹介します。

 

騙されないために学ぶ版の心理学です。

 

今回紹介するローボールテクニック(low-ball technique)とは、最初に好条件を出して相手からの了承を得た後で、相手にとって都合の悪い条件を「後出し」したり、好条件を一部除いたりするテクニックを指します。

 

字面だけ見ると、結構タチの悪い戦法ですね。

 

原文(Cialdini et al., 1978)では、この"throwing a low-ball"と呼ばれるテクニックは、新車ディーラーの間で特によく使われていると書かれています。

 

重要なポイントは、極端に安い値段を提示することで顧客のactive decision(積極的な決断)をさせた後、「高額なオプションはこの価格に含まれておりません」といったような不利な条件を後出しするということです。

 

お客さんとしては、いったん「キミに決めた!」と思ったのに、「聞いてないよ〜!」と憤慨している状況です。それでも、承諾してしまうのです。

 

Cialdini et al. (1978)の実験(Experiment 1)では、63名の心理学クラスの大学生実験参加者に対して次のような依頼をします。

 

「考える過程についての実験に参加してください。参加してくれれば、1時間分の履修とします。」

 

ここで統制条件では、いきなり「午前7時から始まります」と告げられます。大学生にとってはとてつもなく早い時間ですね(?)。

 

ちなみにこの時点で「参加しません」と実験参加者が言った場合、ディブリーフィング(こういう実験でしたと全て説明を受けること)され、「参加します」と言った場合はアポイントを取ります。

 

続いてローボール条件では、研究に協力してほしいという旨を伝えて、了承を得たに「午前7時から始まります」と伝えます。

 

結果、統制条件では31%、ローボール条件では56%の学生が午前7時に集合することを了承しました。

 

Cialdini et al. (1978)の論文では以下のように書かれています。

 

low-ball phenomenon is reliable, robust, and mediated by a commitment to an initial, uncoerced decision to perform a behavior. (p.474)

 

したがって、最初の決断が強制されていないものであることによってコミットメント(約束したことをしっかりやろうということ)が生じ、次の「自分に不利な条件」に対しても承諾してしまうということです。

 

身近な例で言えば、「半額セール!」という文字を店頭で見て、前から欲しかったものをレジに持っていったところ、「それは割引対象外です」とか「それは10%OFFです」と言われても引き下がれず買ってしまうのがローボールです。

 

似たようなテクニックとして「フット・イン・ザ・ドア」がありますが、「フット・イン・ザ・ドア」 は2つのお願い事があり、前者を受け入れやすいものにしているのに対して、ローボールでは1つのお願い事の中に含まれている「都合の悪い要素」を隠しているという違いがあります。

 

とはいえ、学者でない限りこのような違いはどうでもいいです。今日覚えていただきたいのは、

 

都合の悪い条件は、うまーく隠されている。

 

ということ。これだけです。皆さん、気をつけてください。

 

 

【参考にした文献】

Cialdini, R. B., Cacioppo, J. T., Bassett, R., & Miller, J. A. (1978). Low-ball procedure for producing compliance: Commitment then cost. Journal of Personality and Social Psychology, 36, 463-476.