心理学論文や人間関係的考え方を紹介!

2017.8.16~2020.8.31連続投稿(1,112日)。以降は不定期更新です。

【科学の話】死について考えるとどうなる?

私たちは普段、死について考えることはほとんどありません。

 

これが、ハイデッガーに言わせればダス=マン状態です。

 

しかし、人生のあらゆる段階で、私たちは死について考えざるを得ないことがあります。そんなとき、私たちはどのようなことを考えるのでしょうか。

 

これについて研究が蓄積されてきたのがTerror management theory(存在脅威管理理論;TMT)です。

 

TMTとは、「死が不可避であることを(ある種、改めて)自覚することによって、自分自身が所属している集団の中にある価値観(文化的世界観といいます)をいつもよりも重要視しようとする」という理論です。

 

Greenberg et al. (1990)の実験(Study 1)では、キリスト教徒の実験参加者が対象となっています。彼らに質問紙に回答させる上で死に関する思考を高める操作をする群としない群に分けます。死に関する思考を高める操作は具体的には以下の通りです。

 

Specifically, they were asked to write about what will happen to them as they physically die and the emotions that the thought of their own death aroused in them.(p.310)

 

このような操作をされた実験参加者は、統制条件(死について考えさせない群)の実験参加者よりも、ユダヤ教徒に対する評価を低くしたという結果が得られました。

 

これは社会心理学的によく言われる「内集団ひいき」ですが、死について考えることによって自分たちの集団が他の集団よりも優れていると思おうとするのです。MS(Mortality Salience)仮説といいます。

 

もしかしたら私たちは、死の恐怖を緩和し続けていくために文化を創造(想像)してきたのかもしれません。大変興味深い研究です。

 

 

【参考にした文献】 

Greenberg, J., Pyszczynski, T., Solomon, S., Rosenblatt, A., Veeder, M., Kirkland, S., & Lyon, D. (1990). Evidence for terror management theory II: The effects of mortality salience on reactions to those who threaten or bolster the cultural worldview. Journal of Personality and Social Psychology, 58, 308–318.