心理学論文や人間関係的考え方を紹介!

2017.8.16~2020.8.31連続投稿(1,112日)。以降は不定期更新です。

留学するとイヤな奴になる?という研究を紹介します。

グローバル化という言葉さえ風化しつつある現代社会で、「留学」という選択肢はかなり開かれたものになりました。

 

夏目漱石内村鑑三伊藤博文などが挑戦した時よりもはるかにハードルが下がった今、外国語や海外の文化を現地で学ぶことは決して珍しくありません。

 

そして、誰もが「留学することにはメリットしかない」という風に思い込んでいることと思います。もちろん、現地で犯罪やテロに巻き込まれたり、航空機の事故に遭ったりするという意味ではリスクがあるかも知れませんが、このようなリスクを無事に回避し、帰国した後に聞くことは「よかったこと」しかないでしょう。

 

本当にそうですか?というのが、今回の研究のご紹介です。

 

Lu et al. (2017)の研究では、留学のダークサイドの可能性が報告されています。

 

具体的には、8つの研究を通じて、留学経験が認知的な柔軟さ(cognitive flexibility)だけでなく、道徳的な柔軟さ(moral flexibility)をも生成することが示されています。

 

ここでいう留学のダークサイドとは、留学によって「道徳に反する行動」が増えるということを指します。

 

研究チームはこのような現象について、留学することで「道徳の相対主義(moral relativism)」が増幅し、結果として不道徳行動につながりやすいと主張しています。

 

道徳の相対主義とは「道徳というものは絶対的なものではなく相対的なものである」という信念です。

 

この効果は、高校生・大学生・成人など幅広い範囲で見られるようです。

 

ここからは私の見解となりますが、たしかに留学というのは「多様な価値観に触れる」ことであり、それは同時に「これまでたった一つだと思っていた価値観がひとつではなかった」ことを示します。

 

したがって、「今まで従っていた道徳は必ずしも従う必要があるとは限らない」という認識に到達することは、(実際に不道徳な行動を取るかどうかは別として)必然的なものなのかもしれません。

 

多様な文化に接触しつつ、既存の価値観を単に壊すことなく、上手にミックスしていくことが必要ですね。

 

これから留学する人は、留学のダークサイドがあるという認識を持ちながら、海外の様々な文化に触れていき、帰国後の自らの行動に気をつけることをお勧めします。

 

【引用文献】

Lu, J. G., Quoidbach, J., Gino, F., Chakroff, A., Maddux, W. W., & Galinsky, A. D. (2017). The dark side of going abroad: How broad foreign experiences increase immoral behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 112(1), 1–16.